かぐや姫の物語のすすめ 1
先週から公開されている「かぐや姫の物語」の動員数がおもわしくなく、かつ周りの人から聞く評価も悪いように思います。せっかく、千円以上のお金を払って見るのに、「まあまあ、おもしろかった(月並)」では勿体ないと思います。
なので、見に行ったけど、いまいちよくわからなった人や見ようかどうか迷っている人に対して、「どうやって見るか」という視点で少し語ってみます。
下段に行くほどネタばれが増えていきますので注意してください。ただ、この作品の場合はネタばれしても十分楽しめると思います。
映画館に行こうか迷っている人はこのブログを見て「見たくなった」or「DVDレンタルで十分」と思った瞬間にページを閉じてもらって結構です。前者は早めに映画館に行ってもらいたいですし、後者は「かぐや姫の物語」のことを忘れて、来年の夏あたりにレンタルしてください。
これ以降感想に入ります(ネタばれ注意)
まず、率直な感想として「おもしろい所とつまらないところが混在していた」ように思います。
何が面白くて、何がつまらなかったかを考えながら、どういう風に見るべきか考えていきます。
今後の方針
以上の視点から見ていきます。下に行くほど映画を見ないと知りえない情報(ネタばれ)が増えていきますが、別に大丈夫だと思います。
映像表現について
CMなどを見れば分かりやすいが、かぐや姫の物語は独特の映像表現に仕上がっている。かぐや姫の物語と風立ちぬの広告を見比べてみる。
いうまでもなく、同じジブリ作品だが、画風は全く違う。「風立ちぬ」は見なれたアニメの表現であり、かぐや姫の物語は鉛筆画とも水彩画とも言えるような形である。
好き嫌いは個人の好みであるが、技術面で言うと「かぐや姫の物語」ではより多くの画面処理を必要とする。
二人のキャラクターの輪郭線に注目していただきたい。風立ちぬの堀越次郎は輪郭線の切れ目がなく、かぐや姫の物語のかぐや姫は輪郭線の切れ目が見られる。かぐや姫の物語に見られる、数ミリの輪郭線の隙間が後々に厄介なものになって、より多くの作業工程を生む。
実際にアニメを作る時、着色は輪郭線を基準に描かれる。わかりやすく言えば輪郭線の内側を塗りつぶしながら描くことで多くの枚数(風立ちぬで約27万枚)を処理していくのだ。
しかし、かぐや姫の物語では輪郭線が切れているため、線画(輪郭線の切れ目あり)と動画(輪郭線切れ目なし)の二種類を作らなくてはならない。つまり着色用の動画を作り、その輪郭線を消して、その上に水彩画タッチの線画を上乗せして作品にするのだ。
詳しくはNHKのニュースウォッチ9(2013年10月30日放送)で公開されているようだ(未視聴)。
かぐや姫の物語はこのような工程によって、生きた線と幻想的な淡い着色の動画の融合が行われ、新しい映像表現の道を開拓した。単なる一例を示したが、他にもグラデーションの彩色やCGとの調和などはすごい。
しかし、正直な話、映像に興味のない視聴者にとって工程の数などどうでもいい。そして、シーンごとにキャラクターの描き方にブレが生じている(かぐや姫の喜怒哀楽で描き方は大きく変わる)。これを、見難い(わかりにくい)と感じる人もいると思う。
かなり難しい問題である。好き嫌いと技術の善し悪しは違う。
そのような技術的背景を考慮して劇場で無料配布された6分間のプロモーションビデオを見ていただきたい。
6分 ジブリ かぐや姫 プロローグ 〜序章〜 11/23より公開 Studio Ghibli "Kaguya-hime no Monogatari " - YouTube
このPVの映像が、おそらくかぐや姫の物語の技術的な表現のすべてを表している。キャラクターや自然の動き、背景の造形美に対して「生命感」や「美しさ」、「新しさ」を感じたりしなかった人にとって多分「かぐや姫の物語」はお勧めできません。
「どうやってみるか」を語ると言った以上、私が「この映像に感動しましょう!そうすればかぐや姫は楽しく見られます!」みたいな主張する必要がありますが、無理ですよね。
だから、映像にあまり肯定的な感情を持たずに「ジブリだから」というような理由だけで映画館に足を運んでも良くないです。
わずかでも映像に興味を持った人は次回も読んでみてください。